この記事では、やなせたかしさんの名言をまとめてみました。子どもたちが大好きなアニメ『アンパンマン』の作者として知られるやなせたかしさんは、戦争を経験している人物。アンパンマンから生まれたやなせたかしさんの名言や、アンパンマンが誕生した理由には、ご自身の過酷な戦争経験が関係していました。ただの「子どもに人気のヒーロー」ではない、私たちが思っているよりずっと深い意味を持つ、アンパンマンについて見ていきましょう。
やなせたかしの名言まとめ
それでは、やなせたかしさんの名言をご紹介します。やなせたかしさんの名言は、ご自身が経験した戦争にまつわる感情、そしてそこから生まれたアンパンマンという「正義のヒーロー」にまつわる、生みの親としての思いです。戦争を知らない私たちには想像もつかない、過酷な経験をされたやなせたかしさんにしか生み出せない名言がありました。
「生きる、生きている、生かされているということは本当にありがたい」
戦争という過酷な時間を耐え抜き、飢えや相手軍からの攻撃から生き延びたやなせたかしさんにしか感じることのできない、悲痛な思いを感じますね。やなせさんは最愛の弟・千尋さんをアメリカ軍の攻撃により亡くしています。早すぎる弟の死が、アンパンマンを誕生させるきっかけの1つになりました。困っている人に親切を分け与えたいという気持ちは、生きていることに感謝してこそなのでしょう。
「実に単純なことです。ひとはひとをよろこばせることが一番うれしい。」
やなせたかしさんは、戦争で次々に人が亡くなっていく場面を目にしました。自身が上海で戦っている最中、フィリピンでは弟が戦死。周囲でも、日本兵や中国兵の多くが命を奪われていきました。自身もマラリアに感染し高熱に苦しんだ経験がありますが、そんな中でも食べ物は十分に与えられませんでした。食べ物がなく、みじめで情けない経験をしたからこそ、人が人を喜ばせ幸せを感じる瞬間を、いとおしく思ったのでしょう。
「なんのために生まれて 何をして生きるのか これはアンパンマンのテーマソングであり、ぼくの人生のテーマソングである。」
アンパンマンマーチに出てくる上記の歌詞は、アンパンマンではなく自分が戦時中に感じた思いを綴ったそうです。戦死した弟のように、戦争で生きる喜びを奪われた弟たち若者への鎮魂歌と解釈することができるこの歌詞は、弱冠20代で戦地に送り込まれ生き延びた自分を思って、自然と出てきた言葉だったのでしょう。太平洋戦争で亡くなった日本兵は230万人といわれています。彼らの魂にもアンパンマンマーチが届いていることでしょう。
「本当の正義の味方は、戦うより先に、飢える子供にパンを分け与えて助ける人だろう」
やなせたかしさんにとって「正義のヒーロー」は、力が強く敵をコテンパンにする人物像ではありません。お腹を空かせた兵士や子どもに食べ物を持ってきてくれる。そんな存在が、真のヒーローだろうと考えたのです。戦時中、やなせたかしさんは「食べ物のほうからこちらに来てくれれば良いのに」と思っていたそう。それを具現化したのが、まさにアンパンマンなのですね。
「ばいきんまんは人間社会に必要なのです。無菌状態ではかえって危ない。」
やなせたかしさんは「戦争が大嫌い」と語ります。しかし『アンパンマン』の中では敵であるバイキンマンのこともしっかり考えてデザインし、存在させています。やなせたかしさんにとって「正義のヒーロー」は、悪役の息の根を止めることはしません。バイキンマン側にはバイキンマンなりの「正義」を持っている可能性があるからだそうです。困っている人を助けるのが正義であり、相手の命を奪うことではないのですね。
【参考サイト:人権を大切にする道徳教育研究会】
「一瞬を一生懸命生きるということと、目の前にいる人を喜ばせる。毎日、それをやっていきます。」
やなせたかしさんの持つ心からの優しさがにじみ出る名言ですね。戦争で九死に一生を得た経験を持つ、やなせたかしさん。一瞬を一生懸命生きることも難しかった当時を振り返り、生きていることの喜びを子どもたちに伝えたかったのでしょう。そして、目の前の人が困っていたら助けて笑顔にする。そんな、簡単そうに聞こえてとても難しい「正義」の行動を、やなせさんは自然に毎日、行っていたのかもしれません。
やなせたかしがアンパンマンを作った理由は?
やなせたかしさんがアンパンマンを作った理由は、ご自身が経験した戦争にありました。やなせたかしさんは20代のときに中国へ出征。お国のために戦うことを誓い、空腹や痛みに耐え抜き「正義」を信じて戦い続けました。しかし、結果は敗戦。アメリカ兵に捕えられ、食べ物もまともに与えられないままつらい時間を過ごしたそうです。そのとき、やなせたかしさんは「戦争が大嫌いだ」と心底思ったと語りました。
【参考サイト:nippon.com】
「正義とは何だ」と自問自答
やなせたかしさんは国のために戦い、同じく戦争に出た実弟を亡くしました。自分たちの軍隊も中国軍の奇襲を受け、アメリカ兵に捕えられ、威張っていたやなせさんの上司も権威をなくしました。戦争で負けた国の兵隊がどれだけみじめか痛感し、同時に「正義とは何だろう」と考えたそうです。そして、当時のやなせさんが考える正義のヒーローとは、お腹を空かせた自分たちのような兵隊に食べ物を恵んでくれる存在だったのです。
アンパンマンが誕生するもまさかの不評
やなせさんが最初にアンパンマンを誕生させたのは、1973年。
困っている人に自分の顔を食べさせるという衝撃の設定は、大人から大ブーイングを買います。その魅力に気が付いたのは子どもたちでした。力が強いのがヒーローだという認識が根付いていた当時、アンパンマンのように自分の顔を食べさせ優しさを分け与えるヒーローは、珍しい存在だったのでしょう。日本で生まれたあんパンという食べ物を題材に、なじみやすく気取らないヒーロー「アンパンマン」が誕生しました。
まとめ
やなせたかしさんの名言をまとめてみました。やなせたかしさんの名言は、やなせさん自身が戦時中に経験した悲痛なできごとにリンクしていました。今では子どもに人気のキャラクターNo.1といっても過言ではない「アンパンマン」という可愛らしいヒーローも、やなせたかしさんが経験した生死をさまよう経験に基づいて誕生したことも分かりました。知れば知るほど深く、考えさせられる意味を持つアンパンマン。やなせたかしさんの名言を感じながら、アンパンマンが存在する意味を子どもたちに伝えていきたいですね。
